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バッテリー3 [不登校、ひきこもりのあなたへ]

巧へのリンチ事件に加えて、3年生部員が引き起こした不祥事によって、野球部は活動停止に追い込まれました。その処分が終わって、レギュラー対1年2年の紅白戦が行われることになり、巧と豪のバッテリーは見事にレギュラーチームを打ち負かしました。

再び、野球が出来る喜びに巧たちは胸を躍らせますが、監督の戸村は、事件の余波で大会出場へのチャンスを奪われ、消化不良のまま引退しなければならなくなった3年生部員のために、練習試合を組もうとします。
対戦相手は、全国大会でベスト4までいった隣町の横手2中です。
常識的に考えれば歯が立つ相手ではなかったのですが、戸村もキャプテンの海音寺も、巧の球なら、互角に戦えるのではないかと考えました。

今回の内容で、何と言ってもおもしろかったのは、3年生と巧たちとの紅白試合、巧・豪のバッテリー対横手の強豪打者門脇との勝負でした。この本に登場するマドンナの小町先生と同じく、私も野球のことはよくわかりませんが、フアンの一人として、巧たちの試合をハラハラドキドキしながら、思いっきり楽しむことができました。

自己中心的な巧の性格は相変わらずでしたが、私は巧のような少年って、好きだなと思いました。
巧は、相手にではなく、いつ自分の気持ちに正直で、まっすぐに相手に向かっていきます。相手が先輩であろうと、校長であろうと、誰であろうと、巧は態度を変えずに、自分が正しいと思ったことを主張します。
その若さがうらやましくもあり、カッコいいとも思いました。

それに対して、野球を含めた部活動を、健全な精神と肉体を養うための教育の一環だと考え、何が何でも学校の管理下に置こうとする校長先生の考え方は、大人特有の建前論で、巧が反発するのも無理はないと思いました。
巧たちにとっての野球は、そこで何かを意図的に学ぶためにやるものではなくて、野球が好きでたまらないからやる、強制されてやっているのではなくて野球そのものが楽しいからやっている、というようにシンプルなものだったからです。
こういう部活動が、現実的にも望ましいのではないかと私は思っています。

巧は豪からも、「おまえって、自分のためだけにしか、怒ったり、戦ったりできんのんじゃ。わかってた?」と言われてしまいます。
それはそうなのですが、それでも巧は、相手の言葉はいつもきちんと聞いていて、認めるところは認めています。
巧の内心の言葉が出てきます。
(チッ。巧は舌打ちする。豪といると、時々かなわねえなあと感じる。こいつにだけは、かなわない。そう感じるたびに、舌打ちしてしまう。)

こんな場面もありました。横手中の門脇と勝負するときに、巧が手加減した球を豪に投げてしまったときのことです。
「おまえな、あの四球目のあと、どんな目ぇしておれを見た。わかっとんか。哀れみやがって。勝負の最中に、キャッチャーがピッチャーに同情されて、どうすんだよ」
巧に対する豪の怒りは、半端なものではありませんでした。
巧には、巧なりの豪に対する気遣いがあったのですが、巧はそれを口にはしませんでした。

巧も豪も、同級生の野球部員の沢口も東谷も吉貞も、キャプテンの海音寺も、それぞれに個性をもった、ステキな少年たちです。
それぞれが自分というものをもっていて、その個性がぶつかり合い、触れ合い、またあるときは、うまい具合に受け流したりしています。
みんなそれぞれに違うから、おもしろいのだと思いました。

あなたはどう思いましたか。



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