SSブログ

不登校の生徒の元気の裏側 [不登校、ひきこもりのあなたへ]

新学期が始まりました。
春休み中は、自宅で比較的元気に過ごしていた不登校の生徒も、学校が始まると落ち着かなくなり、心がざわざわしてくるのではないかと思います。

以前のブログに「不登校の子は元気?」という記事を書きましたが、この「元気」は「学校」のことを考えなければということで、「学校」のことを考えたら、途端に元気はなくなります。
たとえ、「明るい不登校」の生徒であっても、学年が上がるにしたがって元気がなくなり、高校受験を意識するようになると、不登校生活が長引いている生徒ほど、不安は際限なく広がっていきます。
学校に行かない生活がふつうになっているので、「学校」が恐怖の対象になっていると考えられるからです。

私に「不登校の子は元気」と教えてくれた生徒は、2月から「家庭塾」に来なくなりました。
初回だけは、私が家庭教師として生徒の家に行ったのですが、2回目からは、生徒が「家庭塾」まで通って来てくれました。
私とは1回会っただけなのに、自宅から1時間以上もかけて、初めての私の家にたった一人で来てくれました。
それだけで、私は彼のことを勇気があって、すごいなと思いました。
3回、4回、5回と続けて通って来て、チャレンジ高校に提出する「志願申告書」も、ほとんど休憩も取らずに集中して書いていました。
与えられた言葉ではなく、自分で納得できる言葉を探して、文のつながりも考えて、文章を書くことと格闘していました。

作文の書き方を教える一方で、雑学に強いという彼から、私もいろいろなことを教わりました。
彼の好きな将棋のこと、ゲームやパソコンの話、(私は見ていなかった)テレビドラマの「金八先生」の内容など、多岐にわたっていました。
まさに、「不登校の子は元気」ということを、自分で証明しているような彼の姿でした。

けれどその一方で、「そう簡単にはいかない」ということも、私にはわかっていました。
不登校の生徒は最初に頑張りすぎて、途中で息切れがしてしまうことがよくあるからです。
自分の意志で、チャレンジ高校の受験を迎えるその日まで、「家庭塾」に通い続けられたとしたら、もはや彼は不登校ではないし、そもそも不登校になることもなかったはずです。

彼が電車の中で寝過ごしてしまって大幅に遅刻をしたり、日にちを間違えて次の日に来たりしても、注意する気にはなりませんでした。
とにかく、通って来てくれさえすればいいと、祈るような気持ちでした。
彼が「家庭塾」に来るようになったのは去年の12月中旬のことで、それから週に1度、5回続けて通って来て、2月に入ってから来なくなりました。
携帯にメールをしても返事はありませんでした。
彼のお母さんからは、チャレンジ高校の前期の試験には受からなかったという連絡が入りましたが、その後のことはわかっていません。

昨夜、NHKテレビで「愛美さんが教室に戻れる日」という番組を見ました。
愛美さんは生徒相談室には行けても、補習授業を1人で受けるための教室には行けずに泣いていました。すぐ隣が他の生徒たちがいる教室で、声が聞こえるだけでも怖くて、いじめを受けた記憶が鮮明に思い起こされてしまうと言っていました。
それでも、愛美さんは、「不登校対応専任教員」に支えられて、全校生徒の前で朗読劇をやったり、顔は上げられませんでしたが、美術の授業に出たりしていました。
この「不登校対応専任教員」の存在は大きいと思いました。授業を持たずに、授業が始まると同時に学校を飛び出して行って、不登校の生徒を一人ひとり訪ねて、ほぼ毎日彼らの心の叫びに耳を傾けるのです。

番組に登場した愛美さんも、真義君も、本人は自分のよさに気づいていないかもしれませんが、心の中に宝物をもった生徒たちでした。
このブログを読んでくれている不登校のあなたたちも、同じように、心の中に宝物をもっている生徒だと思います。残念なことに、その宝物はなかなか自分では発見することはできません。
それを発見してくれるのは、心ある大人だと思います。
私の願いは、あなたたちが自分を否定しないで、自分の中にある宝物にできるだけ早く気づいてほしいということです。
そうすれば、本当の元気も出てきます。元気がでればやる気も出て、いろいろなことをやりたくなります。それは楽しいことです。
そのためには誰でもいいですから、「不登校対応専任教員」のような信頼できる大人、寄り添って一緒に歩いてくれる大人に出会うことです。
あるチャレンジ高校では、新1年生に、張り切って友だちを作ろうと思わずに、まず先生とのつながりを密にすることだというアドバイスがあったそうです。
私は、チャレンジ高校には、あなたたち1人ひとりのよさをわかってくれる先生方が必ずいると思っています。

共通テーマ:学校