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バッテリー 2 [不登校、ひきこもりのあなたへ]

「バッテリー 1」はもう読みましたか。1については、内容しか書きませんでしたが、これから書く「バッテリー 2」については、内容だけでなく、私が読んだ感想も書いてみたいと思います。

中学生になり野球部に入部した巧は、そこで早くも監督の戸村に歯向かい、先輩からは「生意気な新米部員」として反感を買います。
管理野球で、これまで生徒たちを自分の思い通りに動かしてきた戸村は、巧に対しては長髪を切るように命令します。
すると、巧は「髪の長さなんて、野球に関係ないこと言いださないでください。おれ、髪の毛で球を投げているわけじゃありません。全然理にかなってないです」と反論し、命令には従いませんでした。

巧とバッテリーを組みたくて、野球部に入部した豪は、そんな巧を見ていて心配になります。あまり監督に逆らうと、試合に出してもらえなくなると思ったからです。
巧と豪のやり取りがあります。
「試合っていうのは出してもらうんじゃなくて、出るもんだろうが……(略)」
「試合に勝とうと思ったら、おまえを使わんとしょうがないて言うことか」
「そういうこと」
巧の言葉を聞いて、豪は心の中で思います。
(そこまで自分で自分の力を評価するんか。それ、高慢じゃないんか。おまえは思い上がった鼻持ちならないガキにすぎんのじゃねえのか。)
それでも、巧のピッチャーとしての腕を十分に認めている豪は、そうだ、そうだよな。と、相槌を打ちました。

ところが次に、「戸村の言うとおりになるぐらいなら、試合に出ないほうがいい」と巧が言ったとき、豪は激怒します。
豪は悔しかったのです。2人でバッテリーを組んでやる野球が、自分の意地を守るためなら、簡単に捨ててしまえるほどのものだったのかということが。
「おまえは、自分さえよければ、まわりなんかどうでもええんだろう。ちっとはな、人のことを考えてみい。おまえなんか、最低じゃ」
幼稚園のときから、他人に対して怒ったことがないという豪を怒らせたことで、さすがの巧も、(おれが悪いなら、あやまるよ。豪。だけど、おれ、ほんとうにまちがってるのか)と心の中でつぶやきながら、寝つかれない夜を過ごしました。

それでもなお、巧は自分を信じています。戸村に逆らっても、試合に出られると本気で思っています。自分で自分が信じきれなくなったら、自分が壊れてしまう気がして、そんなことはみじめでいやだと感じています。

天才ピッチャーとしての巧の才能を見せつけられた戸村は、巧を認めて、豪とバッテリーを組ませて、試合に出すことを決めました。
おもしろくないのは、これまで、戸村の言いなりになって、好きでもない野球でがんばってきた副キャプテン他数人の先輩たちでした。
誰にも知られない巧妙な手口で、巧は集団リンチを受けます。
「もしかして、このまま死ぬのかな」と、巧が考えるほどのひどいものでした。

この先の展開について知りたい人は、自分で読むことをオススメします。ぜひ、読んでください。

「バッテリー 2」についての私の感想ですが、何といっても心に強く残っているのは、自分を信じきれる巧の強さでした。相手が威張り腐った教師であろうと、習慣的にリンチやいじめを行っている先輩であろうと、巧はつねに自分を変えることはありません。
相手の顔色を見て、相手に合わせるようなことは決してしないで(しないというより、できないのですが)、自分の気持ちに素直になって、ものを言ったり、行動したりします。
どんなことがあっても自分を貫き通すその姿勢に、快いものを感じました。

また、巧と豪、さらに同級生の野球部員たちが、表面だけの付き合いではなく、本気でぶつかり合い、喜んだり、怒ったり、泣いたりしているのも新鮮でした。
著者のあさのあつこさんが、この本を書き始めたのは10年ほど前とのことですが、今の学校生活で、このような友人関係を築くのはなかなか難しいのではないかという気もしました。
巧と豪は、お互いに相手にとって都合の悪いことや、言ってほしくないことをバシバシ言い合って、傷ついたりもしますが、それでも相手の言葉にはちゃんと耳を傾けて、自分を振り返っています。
自分勝手な巧ですが、自分にはない、豪の相手を思いやる気持ちや、おおらかさ、人間観察力のすばらしさについては、ちゃんと認めています。

今の学校生活は、自分がどう思うか、どう感じるかということより、嫌われないようにしよう、みんなと同じにして仲間はずれにならないように神経を使っていることが多いように思えます。反対意見を言ったり、少しでも非難めいたことを言われたら、人格を否定された感じがして落ち込んでしまうのではないでしょうか。

私は反対意見を聞くのが好きです。もう一昔以上前のことですが、テレビドラマを書く仕事をしていたときに、プロデュサーから感心されたり、ほめられるより、反対意見を言われたり、けなされたりするほうが好きでした。そこに、自分では気づかなかった発見があるからです。意見を闘わせれば闘わせるほど、作品がおもしろくなったり、深くなっていくということもありました。

まだ若いあなたたちは、反対意見を言われたり、否定されたりするとショックを受けるかもしれませんが、みんなそれぞれに違うからおもしろいのだと思います。
ちょっと、発想を変えてみるのもいいかもしれませんね。



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